LOG IN

アイデアの対極にあるのは『無』

by 阿月まり

「どうしてパラディオンに拘るの。あなたの対岸がフランシス・メイヤーなの? リングの対極にあるものは、パラディオンではなく『』でしょう」
「無?」
「そうよ。あなたはいつか意思が固まってからという。でも、もし固まらなかったら? ああでもない、こうでもないと思い倦ねるうちに、その機会を永久に逸してしまったら? あなたがどれほど素晴らしいアイデアを持っていても、胸の中に抱えていたら、存在しないのと同じだと思うの。物事は、nunc aut numquam(ヌンク・アウト・ヌンクァム) ー今成すか、永遠に行わないかー。今は不確実でも、行動しながら固める意思もあるわ。たとえば、専門家の意見を聞くうちに『これは可能かもしれない』と確信を持つとかね。パパもそうよ。海台クラストの採鉱を思いついた時は、不安な要素の方がはるかに多かった。でも、専門家に学び、過去の事例を研究し、様々な情報に触れるうち、確信に至ったのよ。自分のアイデアに自信が持てず、批判や嘲笑を恐れる気持ちも分かるけど、それではどんなアイデアも日の目を見ることはないわ。たとえ世界を変えるアイデアを持っていても、形に示さなければ、物事は一つも動かないのよ

海洋小説『曙光』MORGENROOD(下巻)


阿月まり
OTHER SNAPS