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鮭の産卵 -死んで子供の糧となり- 

by Tomoko Ishida

「まあ、どんな映画?」
「鮭の産卵」
「は?」
「鮭(トラウト)だよ。サーモン」
「マリネにする魚?」
「そう。君の大好物」
「それが卵を産むビデオ?」
「そう。『オーシャン・プラネット』の中でもベストスリーに入る感動作だ。きっと君の気に入る」

それは長さ三十分の科学ドキュメンタリー番組だった。
大洋を周遊する鮭の群れは故郷の川を上り、パートナーを見つけて川床に大量の卵を生み付け、そのまま死んでいく。番組の最後、大量死した鮭の死骸が川面をいっぱいに埋め尽くすと、さすがにリズも顔色を変え、「なんだか残酷ね」と漏らした。
でも、こうして卵の側で死んで行くから、その死骸はやがて稚魚の餌になり、厳しい自然を生き抜くことができるんだよ
「子供の餌に……?」
「そう。親の死骸は自然に腐敗して、卵が孵る頃には栄養豊かな食べ物になる。救われるのは稚魚だけじゃない、熊やキツネなど、冬を越した森の動物たちの食糧にもなる。食い散らかされた鮭の死骸は一つ残らず稚魚や動物の糧になり、川と緑を育むエネルギーに生まれ変わるんだよ
「そうだったの」
「自然と生命の関わりは本当に不思議だ。どれ一つ欠けても自然は成り立たず、自然が機能しなければ生物も生存できない。まるで緻密に織り上げられた宇宙のプログラミングを見るようだ」


Tomoko Ishida
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